ワイヤレスマイクについて知ろう!
- 2020/04/27
- カテゴリー:コラム
近年格段に使用頻度が増えてきた物といえばワイヤレス機器です。ライブでもワイヤレスマイクを使う方が多くいるかと思います。パフォーマンスの際ケーブルが邪魔だからと何となく使ってるという方はもちろん、これからワイヤレスシステムを使用したいと考えている方にもぜひ知っておいて欲しいワイヤレスのあれこれについてお話しします!
もくじ
・メリットとデメリット
・ワイヤレスシステムの種類
・周波数とチャンネル
・アナログワイヤレスとデジタルワイヤレス
・周波数帯の種類
・電子機器の取り扱いに注意
◯メリットとデメリット
まず始めにワイヤレスを使用するにあたって、ワイヤード(有線)と比べて何が勝って劣るのか見てみましょう。
[メリット]
・ケーブルが無い
・行動範囲の拡大
なんといってもマイクや楽器からのびるケーブルが無いというのがワイヤードとの最大の違いであり魅力ですよね!ケーブルがスタンドに引っかかって倒れたり過ってケーブルを踏んで抜けるなんてトラブルが解消されます。さらにワイヤードはケーブルの長さで動ける範囲が限られてしまう所をワイヤレスなら電波の届く範囲を自由に動き回れます。
[デメリット]
・ワイヤードに比べ音質がやや劣る
・同時使用数の制限
・電波干渉トラブル
近年だいぶ改善されつつありますが、電波で音を飛ばすワイヤレスは電線を使用するワイヤードに比べて音質が劣ってしまいす。またその電波(周波数)の使用範囲に制限があるのでワイヤレスを同じ空間で同時に使える数に限りがあるのも欠点です。そしてワイヤレスを使用する時の1番の問題である電波干渉!複数使用している時に特に起こりやすいのですが、電波の干渉で音が途切れてしまうんです。
ワイヤレスもワイヤードも取り扱いの注意点は同じです。
扱う上での注意することについてはこちらの記事を見てみてください
→機材の扱いと音源
素晴らしいメリットがある反面デメリットがあることを理解した上で自分のライブスタイルにあった方を選びましょう!
◯ワイヤレスシステムの種類
そもそも音響で言うワイヤレスシステムとは、入力された音を送信器(トランスミッター)から電波を利用して受信機(レシーバー)へと送る仕組みの事です。送信機と受信機をペアで使用するので、必ず1つの送信機に対して1つ受信機が必要になります。
主にライブでよく使われるワイヤレスシステムは、[ハンドヘルドワイヤレスマイク][ヘッドセットワイヤレスマイク][楽器(ギター/ベース)用ワイヤレス][イヤーモニターシステム]の4種類かと思われます。それぞれどのような物なのか見ていきましょう!
ハンドヘルドワイヤレスマイク
手に持って使用する最もスタンダードな形のワイヤレスマイクです。マイク自体が送信機になっています。受信機は薄い箱形の物にアンテナが付いている物が多いです。
ヘッドセットワイヤレスマイク
頭に固定して使用するワイヤレスマイクです。こちらはマイクとは別に送信機が必要で、マイクからのびたケーブルの先に送信機を装着します。マイクを付ける位置は違いますが同じ仕様のテレビで使われるピンマイクだとイメージしやすいかと思います。受信機はハンドマイクと同じ物が使用できます。
楽器用ワイヤレス
送信機にプラグが付いていて、そのプラグをギターやベースのジャックに挿して使用します。受信機はマイクの物に比べてメーカーによって様々な種類があり、送信機と同じフォルムの物やエフェクターの様なフォルムの物などプレイヤーの足下に置く事が多い楽器用のワイヤレスは比較的コンパクトになっています。
イヤーモニターシステム
イヤーモニターはイヤモニと略して呼ばれていて、ステージ上で演奏するプレイヤーが音を聴くモニターとして使用します。上記の3つのワイヤレスはプレイヤーが発した音をPAのミキサーへと送りますが、イヤーモニターはPAのミキサーからステージ上のプレイヤーへと音を送ります。つまり逆の流れで電波が送られるわけです。そのため形状も送信機がワイヤレスマイクの受信機のような箱形をしていて、受信機がヘッドセットの送信機の形に似ています。
使用の目的としては、広い会場でステージも広くなると会場の残響や観客の歓声で聴きたい音が聴こえにくかったり、モニタースピーカーを置いている位置から離れると聴き取りにくくなる問題を解消するためなどが挙げられます。その他にも、大きな音によるプレイヤーの耳にかかる負担の軽減や音源(バックトラックミュージック)と演奏をあわせる為のクリック(メトロノームの用な物)を聞くためといった用途やメリットがあります。
◯周波数とチャンネル
ワイヤレスを使用するとなると切っても切り離せないのが “周波数” の話です。
ワイヤレス1つにつき周波数を1つ使用するのですが、ワイヤレスによっていくつかの決められた周波数から選べてそれぞれをチャンネルと呼びます。どのチャンネルがどの周波数かは製造メーカーや製品によって異なるので購入する際はどの周波数を使っているか注意して見るようにしましょう。
さらにチャンネルはいくつかのグループに分けられていて、複数個のワイヤレスを使用する場合は必ず同じグループのチャンネルを使用しなければなりません。詳しく説明するととてもややこしいのですが、全ては混信による電波干渉をさける為です!同じグループを選んでおけば自然と混信しにくい周波数のチャンネルを選んでくれるようになっています。とっても便利ですよね!
先ほども言った通り製品によってチャンネルの周波数が違うので、電波干渉をさける為に同一空間で複数ワイヤレスを使用する場合はなるべく同じ製品を使用する事をオススメします。
◯アナログワイヤレスとデジタルワイヤレス
ワイヤレスには、アナログ信号のものとデジタル信号のものがあります。アナログワイヤレスは音を波形のまま圧縮して伝送します。それに対してデジタルワイヤレスは、波形を一度デジタル信号(0と1のみで表す信号)に変換して伝送した後、受信機で再びアナログ信号に戻す処理をします。
この2つの送り方の違いで色んなところに違いが生じるのですがその中からいくつかピックアップして見ていきましょう。
[音]
1番は音の違いだと思います。アナログ信号で伝送するとノイズがのってしまうのですが、少しでもノイズを減らすため音の高い成分と低い成分を削り人の耳によく聞こえる部分だけを切り取って伝送しています。そのためどうしても高音域が弱いなと感じるサウンドになってしまいます。それに比べてデジタルワイヤレスはデジタル信号に変換するので、入力されたそのままの音を伝送できます。つまり音の劣化がありません。
[混信による干渉]
デジタルワイヤレスはアナログワイヤレスに比べて混信しにくくノイズに強いのが特徴です。そのため同一空間で使用できる数がデジタルの方が圧倒的に多いです。ただ、アナログワイヤレスは電波状況が悪くなるとノイズが増え音が悪くなりながらもかろうじて繋がりますが、デジタルワイヤレスはぱっつり音が途切れてしまうので電波状況により注意が必要になります。
[価格]
製品によって様々なので一概には言えないですが、アナログワイヤレスよりデジタルワイヤレスの方が比較的価格が高いです。詳しくは次の項目でお話ししますが、高価なデジタルワイヤレスの中でも2.4GHz帯の製品のようにコストパフォーマンスが良い物もあります。
◯周波数帯の種類
ワイヤレスは種類ごとに違う周波数帯が割り当てられています。周波数帯とは「この周波数からこの周波数まで」という周波数の範囲の事です。何故分けられているかというと、ラジオやスマートフォンなどの様々な電波が干渉しないように電波法という法律があり、決まった周波数内でないと使用できないようになっているからです。
マイクや楽器用のワイヤレスに使用される周波数帯は”A型帯” “B型帯” “2.4GHz帯”の3つです。具体的にはおおよそですがA型帯は”470~714MHzと1240~1260MHz”、B型帯は”806~810MHz”、2.4GHz帯は”2400~2497MHz”を使用しています。
ではこの3つの周波数帯であればどこでもいいのか?というとダメなんです。
[A型帯]
A帯を使用するには特定ラジオマイク運用調整機構(特ラ機構)に入会し、無線局免許の取得といつどこで使うかの運用連絡が必要になります。
つまり免許を持っている人が許可を得て使用するA帯は、混信トラブルを回避できるため大型フェスや大規模なコンサート、テレビ収録などで使用されています。なので個人はもちろん小規模なライブハウスでもまずA帯のワイヤレスを所持することは無いでしょう。
ということで、通常楽器屋さんで販売しているワイヤレスマイクは免許が無くても使用できるB型帯もしくは2.4GHz帯の物になります。
[B型帯]
現在販売されているワイヤレスはB帯が主流となっています。最大30チャンネルありますが、電波干渉をさける為に同時使用はアナログだと6派、デジタルでも10派までです。
[2.4GHz帯]
周波数が高いためこの周波数帯のワイヤレスは全てデジタルワイヤレスになります。最大16チャンネルあって同時使用も16派です。
B帯のデジタルワイヤレスより比較的安価で購入できるのが魅力ですが、この周波数帯は皆さんにも親しみがあるであろうWi-FiやBluetoothでも使用されています。そのためB帯のワイヤレスより混信がおこる可能性が高いので使用する際は周りの電子機器にも注意が必要です。また、2.4GHzというとても高い周波数を使っているので人や物などの障害物による電波の途切れも起こりやすいです。
◯電子機器の取り扱いに注意
ここまでずっと電波の話をしてきましたのでワイヤレスを使う時はとにかく良い電波環境が大切だと言う事はもうお気づきですよね。多くの方がスマートフォンを常に持ち歩いてると思いますが、スマートフォンで歌詞を見ながらワイヤレスマイクで歌おうとしてノイズが乗ったり、ポケットに入れているだけでも楽器を弾いた時にノイズが乗るなんて事もあります。なのでステージには電波を発する物を持ってあがらないように気を付けましょう。
またワイヤレスを使用しているときはスマートフォンの電波状況も悪くなります。ネット上にある音源を流そうとすると読み込めずに止まるなんて事もよくあるのでワイヤレスを使用するイベントでは控えましょう。
長々とワイヤレスについてお話ししてきましたが、掘り下げてみるとややこしいけど奥が深いですよね。
ワイヤレスシステムを使う機会があるときは是非この記事を参考にしてみてください!
難しいなと感じた方はただ一つ「電波状況には注意しましょう♪」
他にも現役ライブハウススタッフならではのいろいろな記事があるので気になった方はそちらもご覧ください
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